RukeとLuNaYuの日記
I know the truth.
I know whole.
And I...know you.
平凡な大学生活の日記です。時折まじめな長文を書く病気になります。興味がなければ読み飛ばしてください。
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#一応真面目な話題なのでタイトルもまともで。。。

今年度の東京大学の入試問題の物理なのですが、第一問は予備校なんかは典型問題等と言って済ませてしまうのでしょうが(そして的中とか宣伝するのだろうけれど)万有引力の問題でありながら運動方程式が解ける場合の基本である単振動を扱う事になる物理の世界で好まれてきた良問をストレートに出したという点で評価できますし、第三問に至っては受験生にはなじみのないだろう現在流行りのトピックをストーリーとして完結した問題にした上で(レーザートラップについて言及する等)、高校物理の範囲で扱える部分だけを設問として取り上げているという点で、まさに大学の先生でないと作れない、それでいて単なるマニアックな問題にならず、受験生に何を要求しているかが明確でしかもそれを受験生がどの程度満たしているのかをきちんと判別できる、神がかり的な良問なのですが、、、

問題は第二問です。これ、まず少なくとも
代々木ゼミナールの解答
河合塾の解答
駿台予備校の解答
では納得できない受験生が続出するのではないかと思います。

さらに、もちろん予備校解答は出題者のせいではないのですが、この問題に高校程度の理論物理の知識で答えを与える事は容易な事とは思えないのです。
各予備校のページにも問題はありますが、一応自分で描いた図を載せておきます。

問題設定は以下(原問題文に比べて改変あり。)

薄いアルミ円板とボタン型磁石を張り合わせたものを磁石の磁力を使って鉄くぎを介して乾電池の鉄製負電極につるす。乾電池の正極からリード線をのばし抵抗を介して他端Pをアルミニウム円板の円周上の点に運動を妨げないように触れさせる。

するとアルミ円板とボタン型磁石は回転を始める。それはどちら方向か?

以上が問題である(二つ目以降の設問について問題点はないので省略)。

考えるべき力は二つある。

まず第一は電流が受けるローレンツ力だ。これについては特に説明は要らないだろう。
img2.png

所が予備校解答は皆ここで解答を止めてしまっているが、当然この現象と裏表の関係にある電流が作る磁場から磁石が受ける力を考えなくてはならない。これは無視できると勝手に仮定できるような物ではない。何故なら先ほど考えた力F1と作用反作用の関係にあるからだ。導体が受ける力の計算などに関して「自己力の合力は0」という知識をほとんどの受験生は持っているはずだ。

ただし注意しなければいけないのは、これを以って「何も起こらない」と考えては行けないと言う事だ。その理由は以下の二つだ。

  1. 電磁気現象のような場を介して行われる相互作用では、作用反作用の法則は一般には成り立たない。これは作用反作用の法則が実質的に運動量の保存と同じ内容である事から、電磁場が運動量やエネルギーを持つ事を知っていればこれは納得できる。また相対論では同時刻であるかどうかが慣性系によって変わるから、厳密に同じ地点で起きる相互作用でなければそもそもこのような法則に意味はない。

  2. 作用と反作用の関係にある力は偶力の関係にあるから、合力は0でもモーメントは必ずしも0とはならず、回転運動を起こす事はできる



従ってこの問題に答えを与えるためには最悪積分によって全モーメントを求めなければならない。釘の頭によって水平面内回転軸に関する回転は制限されているから、モーメントの鉛直成分だけが問題になる。

この計算を受験生に求めるわけにはいかない。それでは適当な仮定の下で大まかに評価する事はできるかというと、これはかなり難しいだろう。どうしても曖昧な議論になる。そうならば受験問題として適切とは言えないだろう。

仮にN極に作用する力は合力がN極上のある一点に作用すると考え、S極に作用する力もまた合力がある一点に作用すると考えて図にしてみると大体以下のようになる。



ここで先に説明したように作用反作用の法則は必ずしも期待できないのだが、まあ大体成り立っていると考えれば、F2とF3の差F2-F3は大体F1に等しいと考えられる。

すると後は軸からの距離を考えなければいけない。磁力線の様子を考えれば電流の周りだけに同心円状に磁場が出来ているわけではないから、磁石の右側部分も力を受ける。感覚的に言ってこの寄与はN極ではほとんど無視できる程度であるのに対しS極では結構大きく、F3の作用点はF1,F2に比べて軸付近であると考えて良いだろう。

こうして見ると、F2による鉛直下向きのモーメントはF1,F2によって完全に打ち消されず、アルミニウム円板、磁石を合わせて、鉛直下向きのモーメントが働く。これはすなわち上方から見て時計回りに回転させるモーメントである。

おお、予備校解答と逆の結果になった。

とは言え、この解答も到底自身を持てるような解答ではない。試験会場で実際に問題を解いた受験生ならばなおさらであろう。実際には間違ってはいても受験生には罪のない幾通りもの解答があり得るだろう。

おそらくこの問題にとりあえず確実に解答するならば、現実的な方法はただ一つ、二問目の小問を先に自分で考察し、レンツの法則を用いる事だ。この場合結果は予備校解答と同様になる。

#しかし上の考察は何が違うのだろう。ひょっとしてF1とF2-F3は全然ちっとも等しくないのだろうか。

一般に孤立系の全角運動量の保存は、二粒子間の力がそれらの粒子を結ぶ線上を向き大きさが等しく互いに逆向きであると言う事から導かれる。これはローレンツ力がそれぞれの粒子の速度に依存する事から分かるように電磁気力に関しては全く成り立たない。

また運動量に関しても電磁場が運動量を持つという問題がある。

しかしこれら、始め0でもaを持ち去れば-aになるベクトル量とは異なりスカラ量であるエネルギーに関しては、うまく周波数を調整して電磁波を照射してやったりしない限りは散逸しかしない。従って変化を加速するような現象が自発的には起こらないというレンツの法則は単なるテクニックに留まらない強力で汎用性を持った手段なのである。

以上のように予備校解答は確かに結果だけは正しいのだけれど到底点数をあげられる解答ではない。

ところで駿台の分析ページには「高校で実験した事があるかもしれない」とか「分野、テーマ:~単極誘導~」などと思わせぶりな事が書いてある。

僕はこの実験をしたことも、「単極誘導」という単語も知らなかったのだけど、この単語で検索して見たところ、どうやらこのような実験はファラデーにまで遡る有名なトピックらしい。

「単極誘導」と呼ばれるのはこの問題でいう小問の二問目で磁場中で円板を回転させると中心から円周に向かって起電力が発生するというもの。これが誘導起電力の発見に繋がったらしい。

一方一見奇妙な事に円板を固定して磁石を回転させても起電力は発生しない。この事は相対性に関して曖昧な理解しかしていないと相対性を崩しているように見えるけれどそんな事はない。一般に慣性系を移る事で回転運動を止める事はできないからだ。しかしながらこの実験は磁気単極子が存在しない事の決定的証拠になった。磁気単極子が存在するならば磁力線は磁石の回転に伴って回転するはずであるからである。。。ってどういうことだ良く分からない。

また、一見閉じた系がエネルギーの流れはあるにしても角運動量の保存を破って自発的に運動を始めるように見える事から、永久機関を夢見る発明家の間ではわりとポピュラーな話題のようで、疑似科学っぽい文書も多く目に付く。

参考1
参考2
参考3

どうやら駿台の解答を作った人はただ問題文を読むだけで解答を作ったのではなくきちんとした背景知識を持っていたようだ。それであの解答というのはどういうことなのだろう。受験生を納得した気にさせる為だけの解答など百害あって一利なしだ。

このことのせいで「問題設定に磁石が出てきた場合、それは単に定磁場を発生させる為だけの装置であると見なす」みたいな事が「受験業界の常識」扱いされるようになったとしたら余りにも問題だろう。

物理学は現実を、統一的な説明によって理解しようとする学問だ。だから入試問題を作る際には、厳密な議論を要求しないような問題に関しては「受験生に結果を知っている事を要求する」実験のみから出題すべきだ。そうでない実験に関しては、支配方程式を書き下し後は数学の問題として機械的に処理して答えに辿り付ける設問に限定すべきで、そうでない部分については「~と見なして良い」「~は無視してよい」といった適切な指示や誘導を行うべきだ。正解した受験生ですら自分の解答に自信を持てないような出題は(全員を0点にするつもりでない限り)あってはならない。それは物理学の意味を出題者自ら否定するという事だ。

#この問題の場合小問の一つ目にレンツの法則を根拠に回答した受験生だけは確実に自分の解答が正しいと確信して先に進む事ができただろう。しかし、設問の順番から考えてそれを出題者が要求しているとは思えない。結局、出題者の意図が良くわからないのである。
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コメント
この記事へのコメント
コメント読んでる?
2005/04/05(火) 00:18:08 |Oda|URL | #-[ 編集]
身の危険が及ばない範囲で調べてきてくれということだ。
それは無理だろ
2005/04/05(火) 01:07:15 |Ruke|URL | #-[ 編集]
普通の大学の入試問題作成の体制を考えれば、いくら同じ大学に通っているからといって情報が得られる事はないでしょう。ただ、単極誘導というのは、誘導起電力の発見にまで遡る割にはこれまで聞いた事のなかったトピックなので、問題作成に関わったとか、作成者の知り合いであるとか関係なしに専門家の意見は聞いてみたいところですが。
だから身の危険がなんでしょう。
2005/04/06(水) 02:16:45 |Oda|URL | #-[ 編集]
聞いてみたいですねえ。でも、全員が採点に関わっているようだから採点基準くらいは。。。
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