RukeとLuNaYuの日記
I know the truth.
I know whole.
And I...know you.
平凡な大学生活の日記です。時折まじめな長文を書く病気になります。興味がなければ読み飛ばしてください。
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カンタムフィールドフォー (2005/10/15(土) 22:40:57)
また、ワインバーグの視点が場の量子論の形式が相対論と量子論に基づく局所性を持った理論を作ろうとすると自然に出てくるという点にあるとは言っても、それは、その事を何ページもかけて「証明」するという事ではなく、教科書の構成はもっともっと素朴なものだ。

ワインバーグの場の量子論の本は、一歩一歩、相対論的な量子論における局所性を持った理論を、試みに実際に作ってみる、というスタンスで書かれている。だからそれは観測事実に最大限依らない机上の空論で、どれほど難しい議論が展開されようとも、常に、演習問題の域を出ない

しかもその各ステップは常に、あるツール/知識が欲しくなる->作る/得る->>別のツール/知識が欲しくなる...という連鎖構造となっている。全体を概観すると先の長さに呆然としてしまうが、ほとんどあらゆる細かいステップについてすら、次に何をしたくなる/するべきなのかが常に自然で明確に提示される。大抵の教科書を読む場合、僕らは各ステップの議論の正しさをチェックするだけで精一杯で、先を読まない限り先で何が得られるのかを了解する事はできない。しかしこの本の場合相当に先の方まで明瞭に見渡しながら議論を追っていくことが可能だ。つまり、徹頭徹尾あらゆるステップについて目的意識が明確なのだ。僕らは議論の各ステップの精神を一々了解する事ができ、一連の議論の全体を自分でも十分に展開できたとすら言える程度(驕りではなくって、要は外部から学んだ知識を、自分の内的な知識にまで昇華できるという事だ)にまでの理解を得る事ができる。

そして実はこの本では、肝心の、「量子論と相対論に従う局所性を持った理論を作ろうとすると自然に場の量子論の形式で記述する事になる」事について照明を与えていない。それどころか「もし~なら(そして私の知る限りその時に限り)~が成立する」というような言い方すらしている。なんと、必要十分条件であるという事が、ワインバーグの経験によって主張されているのだ!実際いくつかの部分について、「その証明は知られていないが」と注意されている。

つまり、このような感覚は、場の量子論以外の可能性を模索する上で物理学者が出くわした多くの場の理論以外の方法で解決可能だとは到底思えない数々の困難によって裏打ちされているという事だろう。それは、三粒子散乱においてすら既に発生する(つまり一般の場合に解決されるとは到底思えない)という事が書いてあるが、それでも、実際にそのような研究を追ってみない事にはその困難が物理的主張すらも表しているという感覚を持つ事は難しそうだ。

しかし、相対論的な量子力学の下でまともな理論を作ろうとすると、自明な方法(相互作用が皆無)の次に簡単な方法は場の理論であり、それに従って実際に世界を作ってみるという「世界を作ってみよう演習」は、相対論と量子論を学んだ学生にとって単なる紙とペンの演習としてすら十分に意味があるだろうし、その上それは実際に実現している理論ですらあるというのだから、十分に学ぶ価値がある。その上で、量子力学では非可換な演算子を扱うから、ちょっとした性質を満たさせるためだけでも、直ちに、単純な交換関係と単純な変換性を持った演算子だけから理論を構成する他に選択肢がなくなってしまうという、証明を伴わない曖昧な議論のほとんどの部分を支えているこの感覚を汲み取るだけでほとんどの学習者にとっては十分だと思う(少なくとも僕の限られた興味の範囲では今のところは十分だった)。

だからワインバーグの方法では、場というのは、単に単純な交換関係(space-likeな二時空点で交換または半交換する)とローレンツ変換の下での特定の変換性を持つ演算子として、まともな相互作用を構成するための純粋なツールとして導入される。だから、古典的な場、例えば電磁場はしばらくは影も形も出てこないし、正準量子化や経路積分もしばらくは全く言及されない。電磁理論の詳細については邦訳の2巻(原書ではI巻の後半かな?)で正準形式が説明された後に議論されるが、既に1巻で質量0,スピン1の粒子(つまり光子)を記述する場を構成する時、不可避的にゲージ場やゲージ原理が要請される事が議論されている。

生成、消滅演算子も完全にツールとして扱われている。ワインバーグのアプローチでは、まず1粒子状態を議論し(これはローレンツ群のユニタリ表現の既約な成分として導入される。これは我々の知っている「粒子」の定式化としても十分に正当だが、単にローレンツ不変な理論を記述するヒルベルト空間を構成する最初の一歩としても十分に自然だ。粒子についての知識は運動量以外の量子数を離散的な場合に限る所でのみ用いられているにすぎない(この時点で弦理論の類が含まれなくなる)。つまりこれらを1粒子状態と読んでいるのは単なる便宜的な名前にすぎないとしても、世界を実際に作ってみるというスタンスの下ではその後の議論は全く支障がない。従ってワインバーグのアプローチは粒子から出発するというよりもむしろ、ヒルベルト空間から出発しているのだ考えるべきだと思う。それはもちろん、量子力学の基本的な要請を考えれば明らかに最も自然なスタート地点の選び方だ)、次いで一般の多粒子状態をそれらの直積によって構成し、ヒルベルト空間の基底を張る。従って、ローレンツ変換の生成子以外で具体的な理論に依らないような演算子として生成、消滅演算子を考える事は単に十分に自然であるという事になる。

そして、一般の任意の演算子は、多粒子状態間の全ての行列要素を与えれば指定する事ができる(つまりA=ΣC_ab|a><b|)のだが、n個の粒子のリストに従ってを次々と消滅させ、次いで同じn個の粒子を次々と生成すると、n個以下の粒子状態に限っては、ちょうどそのリストと同じ粒子を含む状態だけが生き残るから、これは射影演算子の代用になる事が議論される。つまり、任意の演算子は、生成、消滅演算子で表す事ができる。(ただし、n個以上の粒子状態についてはこの限りではないから、行列要素がそのまま生成、消滅演算子の係数になっているというわけではない事が。)

そして生成、消滅演算子が単純な交換関係を持っているために、それらの多項式を、組み合わせ論的に展開する事ができる事が議論される。この時点で後で出てくるファインマンダイアグラムまでも示唆され、生成、消滅演算子で書いた理論形式において、局所性の要請がS行列に対して非常に簡単に定式化されさらに相互作用についてもそれに準じる事が(こちらは証明はないのだが)議論される。

このような生成、消滅演算子の理論を記述するツールとしての扱いは終始一貫していて、「これは電磁理論のような既存の場の理論を量子化する必要性を超えた問題であり、また、実際に粒子が作られたり消されたりするかどうかには全く関係がない」とまで断言されている。また、5章の議論の下になったという論文を見てみたのだが、そこでは``particle interpretation''という表現が使われているのが興味深い。そうして見ると、「現在の素粒子論では力を粒子の交換によって説明しています」というような言い方が、理論の記述される形式にめちゃくちゃ依存した言い方である事が良く分かる。啓蒙書や解説記事のこのような説明を読んで、僕は「じゃあその力を媒介する粒子の運動はどう説明されるんじゃ~」と気になって夜も眠れなかった事があるのだが(誇張あり)これはその疑問に対する明確な答えとなっているだろう。

また摂動論についても明快だ。僕ら学生は、何でもかんでも摂動論になってしまう事に皆気持ち悪さを感じていると思うけれど、実用上それは仕方がない事も納得してはいる。しかし、素粒子の理論の中心的な部分が、摂動論をばりばりに使いまくって構成されているというのは、ミクロな領域における基本的な理論としてそれで本当に良いのか?と漠然とした不安と疑惑が生じる。

この事に関するワインバーグの答えは単純だ。現在では一般相対論と場の理論との整合性がとれない事などから高エネルギー(具体的にはプランクスケール)の現象にも適用できるもっと基本的な理論があって、場の理論はその低エネルギーでの近似理論だと考えられるようになっている。だから、摂動論を使って計算して良いし、厳密に計算する事に意味はないのだ。そうして時間に依存した摂動論を用いて散乱行列を計算すると、摂動の各次数は場の多項式となり、ローレンツ不変性が満たされている事と局所性の要請が満たされている事が明白になる。そして、その具体的な計算方法がファインマンルールという事になる。

これはつまり、先ほどの、場の量子論以外の可能性を検討した経験によって得られた「場の量子論は以外に簡単だ」という視点に加えて、さらにワインバーグが弦理論等の高エネルギーでのより基本的な理論の可能性を研究してきた事による高い位置にある視点も併せ持って場の量子論を眺めているという事だ。なるほど、僕ら学生が相当に苦労する場の理論について、それは難しくも何ともないという理解をしていなければ、弦理論のような、場と粒子の理論の先にある理論を探す事などできるはずがない。その理解が豊富な知識と経験と才能によってのみ(それこそワインバーグのような人だけが)得られる深い理解というわけではなく、「場の理論は実際に単に簡単で、相対論的な量子論のどんなまともな理論も、低エネルギーでは場の理論になるに決まっているのだ」という理解であるならば、それは弦理論のようなミクロな究極理論に興味がない人間にとっても有益な視点だ。


もちろん、この本にも問題点はある。その最大のものは、やはり、物理学は「世界を作ってみる」学問ではないという事だ。

もう一つは、ここまで散々この本は「簡単だ」と書いてきたけれど、実際の所は、全然ちっとも「簡単ではない」事だ。
#そりゃそうだ。同年代の学生でこの本を簡単だなんていう奴が居たらぶんなぐってやるか、毎朝そっちの方向を向いてお祈りするかのどちらかになるだろう。

その一つの理由は、この本が、一貫性を持った最小限の議論のラインについては、読者に要求する知識を相当に低く設定しているのだけど、そこから少しでも外れると、素粒子論に関する基本的な知識や専門家が持っている基本的な計算技術を当然のごとく使いまくる(それが素粒子論の専門家にとっての基本知識なのか、物理を学ぶ院生くらいなら当然必須の知識なのか、素粒子論の領域に限らず専門家なら基本的に持っている知識なのかは僕には判別できないけれど)ためだろう。

この本は教科書としてのスタイルで書かれているけれど、実際の所、「俺は場の理論をここまで整理して理解しているんだぜ。こうすれば学生に最低限の知識しか要求せずに明快に場の量子論を説明できるでしょ?」という同僚の研究者達に向けての自慢、アピール、あるいは提言であるように感じる。専門家達がこの本を読めば、「なるほど、ここまで整理された視点で場の量子論を学べば、学生達は非常に良くこの理論を理解する事ができるだろう。さすがワインバーグ」と思うだろうが、肝心の学生が(少なくとも僕が)この本を読み通すのはやはりちょっと荷が重過ぎる(でももう少しで5章が終わるし、ファインマンルールはプロパゲータの話以外は既に出来ているも同然だから1巻はどうにかして終わらせたいが、、、)。

また、学ぶ側(つまり僕)の側にも問題があって、例えば、初めてこの本に挑戦した時は、「表現」という言葉は一般名詞だと思っていた。そして簡単に挫折した。学部三年に上がる頃には「表現」という概念は何となく耳にしていたけれど、抽象数学の食わず嫌いで見向きもしなかった。この頃は本当にちっとも勉強していなかったので(まあ今でもだけれど。真面目に一冊の本を読んでいるなんて本当に久し振りだ)、角運動量の理論の基礎的な話を、ようやく授業と平行して学んだだけだった。そこでふとワインバーグの本を開いてみて驚いたのは、それが今やどうにか「読める」という事だった。というか、角運動量を昇降演算子を用いて議論するお話は、ちょうど、SO3の既約なユニタリ表現を列挙するという、「超強力なツールの準備」になっていたというわけだ。そうして読んでいきながら「表現」という奴について数学の本をパラパラと見てみたりしながら、ようやく、表現というのが、群の元の働きを具体的に調べる超基本的なツールであって、群といってもほとんどの場合何らかの変換を扱う物理学では超強力なツールになるという事が(いや同じ趣旨の説明は何度か読んだり聞いたりしていたんだけど)やっと実感できた。先日のスピノルについての言及もそこから来ている。

今になって思うと、実はこういった事を先に知っていれば、清水先生の教科書等で量子論の基本的な枠組みを勉強して、特殊相対論についてはローレンツ変換と上付き添え字、下付き添え字の慣習についてだけ学び、表現という概念についてだけ知って(定理とかはこの際ほうっておいて同型とか既約とかいう事についてだけ勉強して)角運動量を扱いながら同時にSO3の既約なユニタリ表現を調べて、しかる後にワインバーグのアプローチをもっと洗練された教科書を用いて、直ちに場の量子論に進む「超速習コース」が可能なのではないかとすら思う。

別に急げば良いという物ではないけれど、とにかく何が言いたいかというと、ワインバーグの場の量子論の教科書のアプローチを、実際に簡単にする事は、教える側、学ぶ側、双方にとっての義務と言ってよいのではないかということだ。それが遂行されれば、物理学は一歩先に進む事ができるだろうと思うのだ。

#というかそこまで表現ってスゲーと感心した割には何も勉強していないわけで、、、とりあえず月曜日の物理数学の授業にはちゃんと出なければ。。。
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